アニカレ・ダイアリー
絵を描く職業としてのアニメーターのメリット
最近アニメーターの実情といった内容で様々なメディアで取り上げられることが多いのですが、
一部の情報を拡大解釈していたり、歪曲された内容であったり、誤解を招くような内容が多く見受けられます。
本校からもたくさんの卒業生達がアニメーション業界の中で活躍しており、
自分の仕事に自信と誇りを持ち、きちんとした生活を送っている卒業生がたくさんいます。
そこで少しでもアニメーション業界についての理解を深めていただきたいと思い、
本校講師であり、アニメーション業界で活躍し、漫画家としても活躍中の北爪宏幸先生にお話を伺いました。
【北爪宏幸先生】
●アニメーション
「機動戦士Zガンダム」作画監督
「機動戦士ガンダムZZ」「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」キャラクターデザイン・作画監督
「モルダイバー」原案・監督・キャラクターデザイン
●マンガ
機動戦士ガンダム C.D.A. 若き彗星の肖像(2001年〜2009年、『ガンダムエース』連載)
機動戦士Ζガンダム Define(2011年〜、『ガンダムエース』連載中)
【絵を描く職業としてのアニメーターのメリット】
アニメーターは賃金が低すぎる、とても生きていけないという類いの情報を、見聞きされている方も多いと思います。
それはアニメーターという職業の一側面でしかありません。
アニメーターに限らず専門的な職業でやっていくのは、どんな業種であれ大変なことだという事を忘れていませんか?
私は数ある絵描く職業の中でも、プロになるハードルが比較的低く、安定した収入を継続して得られるのがアニメーターという職業だと思っています。
現在の日本の商業アニメの状況は、旧来からの地上波TV放送に加え、ネット配信オリジナルコンテンツという新分野も開拓されつつあり、制作本数は減少する傾向が今のところありません。現場ではスタッフが慢性的に不足していて、それを裏付けるように求人も多数あり、就職希望者に有利な環境です。
実際に活躍しているアニメーターの人達はどんな人達なのでしょうか?皆さんに失礼を承知で敢えていいますが、私を含め仕事を始めた頃は傑出した才能もなく、何年も現場で腕を磨いて一人前になった方が大半です。それも多くの方が本格的な絵の勉強を高校卒業と前後して始められていると思います。
特殊技能を要す職種は、ともすれば小学校就学以前から本格的な勉強を始めなければ、一流になれないものも多いと思いますが、活躍されている方々の現状をみれば、アニメーターは例外ではないでしょうか?
義務教育の過程で映像制作などに触れる機会など、まずないでしょう。多くの方は高校を卒業する頃が、スタート地点なのです。更に映像を創るという特殊な能力は、現場で仕事をする事でしか磨かれないのです。
勿論、スタートと同時に素晴らしい才能を発揮し、活躍されていらっしゃる方々も数多く存在していますが、全員がそうではありません。アニメは大勢のスタッフを必要とする共同作業だからです。スタッフロールにクレジットされている方々の多くは、様々な困難を乗り越え、何年もかけて技術を身につけた方々です。
そして習得が困難な特殊な技術であるが故、一旦身についた能力や信頼はそう簡単に揺らぎません。つまり「そういった人」は、仕事が途切れないということです。
勿論、結婚され家庭を持っているアニメーターの方も沢山います。
私も業界全体で、賃金が低迷しているという問題は否定しません。能力のある方は、もっと優遇されてしかるべきだと思います。
しかし、ある程度の勉強でプロになる事が可能で、決して高額ではないかもしれないけれど毎月コンスタントに収入も得られ、更に長く続けて技術を磨けば、世界中で公開されるクリエイティブな作品に参加も出来る。
絵描く人間にとっての、アニメーターという職業のメリットについて、もっと語られるべきではないでしょうか?